ストーマになってから、最初に頭をよぎったことがある。
「もうバイクには乗れないんじゃないか」
腹部に装具がある。
身体の感覚も以前とは違う。
手術のあとで体力も落ちている。
走行中に装具が気になったら?
漏れたら?
痛みが出たら?
考え始めると、不安はいくらでも出てきた。
それでも、もう一度乗りたかった。
結論から言う。
ストーマでも、バイクには乗れる。
あくまで私自身の経験だが、ストーマがあってもバイクに乗ることはできた。
以前とまったく同じではない。
気をつけることはある。
無理もできない。
それでも、バイクのシートに座って、エンジンをかけて、ゆっくり走り出したとき、こう思った。
「ああ、まだ乗れるんだ」
自分にとって、かなり大きな出来事だった。
まず気になったのは装具の位置
私のストーマは右腹、へその右上にある。
排出口部分は太ももの付け根から約4cm下のところに位置している。
バイクにまたがると、上半身の角度やパンツのウエスト部分がどこに当たるかが気になった。
最初はかなり慎重に確認した。
・装具が圧迫されていないか
・パンツのウエストがストーマに強く当たらないか
・乗車姿勢で違和感がないか
・バッグが膨らんだときに余裕があるか
このあたりは、実際にまたがってみないと分からない。
装具の交換タイミングはどうする?
気になる人が多いと思うのが、バイクに乗る前に装具を交換した方がいいのか、というところだと思う。
私の場合、バイクに乗る直前に装具を交換する必要はないと感じている。
ストーマの状態にもよるが、むしろ交換直後の方が怖い。
肌への接着具合がまだ安定していないからだ。
貼ってから時間が経った方が、皮膚にしっかり馴染んでいる。
バイクに乗る前にあわてて交換するより、接着が安定しているタイミングで乗る方が安心だ。
振動はストーマに影響するのか?
もうひとつ気になるのが、振動の問題だと思う。
私の愛車はHarley-Davidson Forty-Eight。
他のバイクより振動が大きい。というか、それがハーレーの売りでもある。
結論から言うと、これも問題なかった。
走行中に装具が剥がれることも、捲れることも、何ひとつ起こらなかった。
実は退院直前に病院から、人工肛門になったあとの生活について書かれた冊子をもらっていた。
その中に、格闘技のように腹部へ強い衝撃が加わるもの以外は、日常的な運動を大きく制限しなくてよい、という趣旨のことが書かれていた。
バイクの振動は、腹部に直接強い衝撃が加わるものではない。
冊子を読んだとき、あぁなるほどな、と思った。
バイク選びと乗車姿勢も関係する

私のForty-Eightはフォワードコントロールのポジションなので、ストーマを圧迫しない姿勢が自然に取れるのは助かった。
ネイキッドも基本的には大丈夫だと思う。
ただ、SSのように前傾姿勢が強いバイクは、体とタンクの間にストーマが挟まれる形になるかもしれない。
私のストーマの位置なら、かなり気になりそうだと思っている。
ストーマがある場合、バイク選びで大事になるのは性能よりもこのあたりだと思う。
・乗車姿勢、前傾が強くないか
・腹部への圧迫がないか
・シートの座り心地
・こまめに休憩できるか
速さより、安心して乗れるかどうか。
今の自分には、それが一番大切だ。
服装はかなり重要だった
パンツには気を遣う。
私は柔らかいデニムを1サイズ大きめで履いている。
ベルトを締めないと下がるくらいのサイズ感だ。
これくらいゆとりがあると、ストーマへの圧がかかりにくい。
見た目を完全に諦める必要はない。
ただ、「格好よさ」と「安心感」のバランスを、以前より意識するようになった。
バイクに乗るなら安全装備も必要だ。
ジャケット、グローブ、ブーツ。
そこにストーマとの相性も加わる。
面倒に感じることもある。
でも、工夫すれば乗れる。
これは実際に走ってみて分かったことだ。
最初は短い距離から始めた
ストーマになって最初に試したのは、近所のガソリンスタンドへの給油だった。
まずはそこから始めた。
長距離でも、颯爽としたツーリングでもない。
ただガソリンを入れに行くだけの試走。
それでも、シートに座ってエンジンをかけた瞬間のことは今も覚えている。
家から遠く離れすぎない。
トイレや休憩場所があるルートを選ぶ。
体調が悪ければ無理をしない。
帰れる余力を残しておく。
以前なら気にしなかったことかもしれない。
でも今は、この慎重さが自分を守ってくれると思っている。
ストーマがあると、安心して使えるトイレがある場所のありがたさが身に染みる。
道の駅、コンビニ、大きめの公園、公共施設。
そういう場所を頭に入れておくだけで、走っているときの不安がずいぶん違う。
一番大きかったのは、気持ちの問題だった
身体の不安もあった。
装具の不安もあった。
体力の不安もあった。
でも振り返ると、一番大きかったのは気持ちの問題だったと思う。
ストーマになったとき、自分の身体が以前とは違うものになってしまったように感じた。
これまで普通にできていたことが、急に遠くなった気がした。
バイクもそのひとつだった。
けれど、実際に乗ってみると、すべてが終わったわけではなかった。
エンジンをかける。
ゆっくり走り出す。
風が身体に当たる。
信号で止まり、また走り出す。
そのひとつひとつが、以前の自分と今の自分をつないでくれた。
無理をしないことが、長く楽しむための条件
ストーマでもバイクには乗れる。
ただし、無理をしてまで乗るものではないとも思っている。
体調が悪い日は乗らない。
不安が強い日は近場にする。
装具に違和感がある日は無理しない。
これくらい慎重でいい。
バイクは逃げない。
道も逃げない。
体調のいい日に、また走ればいい。
ストーマになっても、楽しめることは残っている
ストーマになったからといって、すべてを諦める必要はない。
できなくなったこともある。
不便なこともある。
気を使う場面も増えた。
それでも、バイクには乗れた。
好きな服を選ぶこともできた。
北海道の道を走ることもできた。
失ったと思っていたものの多くは、まだそこにあった。
ストーマがある身体でバイクに乗ることは、私にとって単なる趣味の再開ではなかった。
それは、人生を少しずつ取り戻していく時間だった。
これからも無理はしない。
遠くへ行ける日もあれば、近場で終わる日もあると思う。
それでいい。
道は、まだ北へ続いている。
※この記事は私自身の体験に基づいています。ストーマの状態や体調、治療経過には個人差があります。バイクや運動を再開する際は、必ず主治医や専門医にご相談ください。
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