道は、まだ北へ続いている。

直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、写真や音楽のこと。思いつくまま、ここに書いています。
直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、
北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、
写真や音楽のこと。
思いつくまま、ここに書いています。

ツーリング用カメラにLUMIX DC-TX3を選んだ理由

バイクで走るとき、どんなカメラを持っていくか。写真を始めたばかりの私にとって、これは思っていた以上に難しい問題だった。

普段使っているのは、Sony α7 VとFE 24-70mm F2.8 GM II。画質に不満はない。むしろ逆だ。初めて本格的なカメラを手にして、スマートフォンとの違いに驚いた。光の入り方。背景のぼけ。暗い場所での粘り。撮った写真をLightroomで現像したときの余裕。

ロイズ ローズガーデン。当別湖。恵庭渓谷。新琴似神社。「道の駅の向こう側」で使っている写真の多くも、この組み合わせで撮ってきた。

だから、カメラそのものを替えたかったわけではない。問題はひとつ。Forty-Eightには、大きすぎた。

α7 Vを持ってツーリングに出てみた

私が乗っているのは、Harley-Davidson Forty-Eight。大きなツアラーではない。荷物をたくさん積んで遠くへ行くためのバイクでもない。車体の後ろに大きなボックスを付けているわけでもなく、積載には限りがある。

最初は、α7 Vをカメラキューブに入れ、サイドバッグへ収めてみた。入る。確かに入る。だが、それだけでバッグの中がかなり埋まった。

ツーリングでは、カメラ以外にも持っていく物がある。私の場合は特に、予備のストーマ装具やケア用品を入れたポーチを欠かすことができない。飲み物もいる。季節によっては、薄手の上着や雨具も考えたい。そこへα7 Vとレンズを入れると、途端に余裕がなくなる。

何より気になったのは、撮るまでの動作が大きいことだった。

バイクを止める。グローブを外す。サイドバッグを開ける。カメラキューブを出す。そこからα7 Vを取り出す。

もちろん、それだけの手間をかける価値のある場所もある。だが、ツーリング中に撮りたいと思う景色は、必ずしも「目的地」にあるとは限らない。

田んぼの向こうに低い雲が見えたとき。海沿いの道で光が変わったとき。ふと振り返ったら、停めたバイクの向こうにいい景色があったとき。そんな瞬間に、まあ、いいか。となってしまう。それでは、せっかくカメラを持ってきた意味がない。

リアバッグを増やすという方法もあった

積載だけを考えれば、答えは簡単だった。リアバッグを追加すればいい。カメラ専用のバッグを積めば、α7 Vも持ち出しやすくなる。実用性だけで考えれば、それが正解だと思う。

ただ、私はどうしても気が進まなかった。Forty-Eightの後ろ姿が好きだからだ。低く、短く、余計なものが少ない。そのシルエットを崩してまでカメラを積むのか。

もちろん、便利さを優先する考え方もある。だが私は、バイクを見るたびに、やっぱりバッグを外したいな。と思う気がした。それなら別の方法を考えた方がいい。そう思った。

iPhoneで十分なのではないか

次に考えたのは、スマートフォンだった。今使っているのはiPhone 16e。ツーリングとの相性だけで言えば、これほど便利なものはない。いつでも持っている。すぐ撮れる。荷物にならない。撮った写真をそのまま投稿できる。

正直に言えば、バイクならiPhoneだけでいいのではないか、とも思った。実際、記録だけなら十分だと思う。

だが、α7 Vを使い始めてから、自分の中で少し変わったものがあった。私は単に景色を残したいのではなく、写真を撮りたい。そう思うようになっていた。

構図を考える。ズームする。光を見る。露出を少し変える。撮った写真を家に帰ってから見直す。上手く撮れなかった理由を考える。

スマートフォンが悪いわけではない。ただ、自分の中で「撮影する」という行為が、以前より大きくなっていた。だから、もう一台カメラを探すことにした。

小さいカメラを探した

候補はいくつかあった。Sony RX100 VII。RICOH GR III。スマートフォン自体を、よりカメラ性能の高い機種へ替えることも考えた。どれも魅力があった。

ただ、考えれば考えるほど、自分が求めているものが少しずつ見えてきた。最高画質ではない。α7 Vの代わりでもない。私が欲しかったのは、バイクで無理なく持ち出せるカメラだった。

小型であること。バイクに乗っていて撮りたいと感じたら、さっと降りて、ぱっと撮って、さっと乗って去れること。それが、選ぶうえで一番大事な基準になった。

その条件を考えて選んだのが、Panasonic LUMIX DC-TX3だった。

6月25日、128,700円で購入した。

安くはない。ただ、このご時世、iPhoneを機種変更する方がよほど高い。他の小型カメラも見てみたが、DC-TX3よりさらに高く、そして大きかった。

手に取ってみると、α7 Vとはまったく違う種類の道具だと分かった。

Panasonic LUMIX DC-TX3

α7 Vの代わりではない

ここは、はっきりしている。DC-TX3は、α7 Vの代わりではない。同じことを求めてもいない。

車で出かけ、じっくり写真を撮るなら、私はα7 Vを持っていく。光を待つ。構図を考える。レンズを向ける。一枚ずつ撮る。そういう時間には、α7 Vがいい。

一方で、バイクは違う。目的地へ向かう途中そのものが旅になる。走っている途中で気になる景色が現れる。少し止まる。撮る。また走る。その繰り返しだ。

そこで重要なのは、持っていることだった。どれだけ性能のいいカメラでも、家に置いてきたら一枚も撮れない。

DC-TX3を選んでから、持ち運び方も見直した。カメラだけが入る小型のウエストポーチを新しく用意し、走行中でも取り出しやすいようにした。

新篠津で初めて持ち出した

DC-TX3を初めて本格的に持ち出したのは、新篠津へのツーリングだった。2026年7月4日。晴れ。Forty-Eightで往復およそ45km。

術後の身体を考えれば、まだ遠くへ行ける状態ではない。だからこそ、新篠津くらいの距離がちょうどよかった。

道の駅。花壇。水辺。湖畔の遊歩道。そして、停めたForty-Eight。小さなカメラを持って歩いた。

使ってみて最初に感じたのは、画質よりも、楽だな、ということだった。取り出せる。すぐ撮れる。持って歩いても負担になりにくい。「カメラを持ってきた」というより、「カメラが一緒にいる」感覚に近かった。これは思っていた以上に大きかった。

気づいたことも、いくつかあった。

ズームがびょーんと伸びる。その動きに、懐かしさを感じた。

ディスプレイははめ込み式で、可動しない。だから、下からのアングルで撮るのは難しそうだと思った。

一方で、RAWで撮れることは、素人の自分には逆に安心だった。撮った後で手直しができる。それだけで、気持ちに余裕ができる。

ボタンは、正直押しづらい。指が大きい自分には、少し窮屈だった。もっとも、これはカメラのせいというより、自分の指の問題だろう。

バッテリーの持ちは、気にならなかった。長時間撮り続けるような使い方を、そもそもしていない。

写真の出来より、撮れたこと

新篠津で撮った写真を家に帰ってから見た。もちろん、α7 Vと同じではない。比べれば違いはある。だが、不満より先に感じたのは、ちゃんと撮ってきた、ということだった。

水辺に停めたForty-Eight。花壇の向こうに見える橋。道の駅の入口。湖畔に沿って続く道。

もしα7 Vしか持っていなかったら、私はあの日、カメラを持って行かなかったかもしれない。そう考えると、画質だけでカメラを選ぶことの意味が少し変わった。

持ち出せることも、性能だと思う

写真を始めたばかりの私は、どうしても性能表を気にしてしまう。センサー。レンズ。明るさ。解像感。高感度。もちろん、どれも大切だ。

だが、バイクに乗るようになって、別の性能があることに気づいた。持ち出せること。邪魔にならないこと。撮りたいと思ったときに取り出せること。もう少し先まで歩いてみようと思えること。バイクを停めて、写真を一枚撮ろうと思えること。それもまた、カメラの性能なのだと思う。

α7 Vは、これからも使う。むしろ、車でじっくり写真を撮るときには主役であり続ける。そしてForty-Eightで走るときは、DC-TX3を持っていく。

どちらが上かではない。どちらなら、その日に持ち出せるか。今の私には、その使い分けが一番しっくりきている。

ツーリング用カメラにLUMIX DC-TX3を選んだ理由。結局のところ、それはとても単純だった。

これなら、走る日に持っていける。

私には、それが一番大事だった。

 

 

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