道は、まだ北へ続いている。

直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、写真や音楽のこと。思いつくまま、ここに書いています。
直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、
北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、
写真や音楽のこと。
思いつくまま、ここに書いています。

針と再生 #23|The Undertones『The Undertones』

Artist:The Undertones
Album:The Undertones(1979)
Track:Teenage Kicks/Get Over You/Girls Don't Like It

The Undertonesを先に知ったのか、「Teenage Kicks」を先に聴いたのか、もう覚えていない。今となっては、どちらでもいいのだと思う。

とにかく、1970年代後半のパンクバンドの中で、THE BOYSとThe Undertonesは、僕の中では別格だった。パンクともパワーポップとも言われるが、そんな区別はもう野暮だと思っている。

いちばん好きなのは、代表曲ではなく「Get Over You」だった。

カラオケに入っていればいいのにと思ったことがある。もちろん、あるはずなどない。それでも当時、分厚い曲目リストのページをめくり、The Undertonesの名前を探した。友人が次の曲を入れている間、指だけがページをめくり続けていた。

見つからないことは、最初から分かっていた。それでも、もしかしたらと思った。

好きな曲というのは、ときどき人にそんな無駄なことをさせる。

だが、好きなのは「Get Over You」だけではない。

「Teenage Kicks」は、途中で手拍子が入り、曲は二分半にも満たない。勢いよく走り出し、こちらが何かを考えるより先に、もう終わってしまう。それでも、もう一度聴きたくなる余白だけを残していく。

「Girls Don't Like It」は、このアルバムの中で三本の指に入る曲だ。すぐ耳に残るメロディがあり、少し頼りなさのある歌声が、そのまま曲の魅力になっている。

結局、どれか一曲を選べと言われても、選べない。順位をつけようとするたびに、いつも違う曲が浮かんでくる。それだけ、このアルバムには隙がなかったということなのだろう。

荒さや速さもある。けれど、最後に残るのは、いつもメロディだった。

このアルバムをどこで買ったのかは、もうはっきり覚えていない。おそらく、当時住んでいた下北沢のdisk unionだったと思う。

The Undertones『The Undertones』のCDジャケット

あの店では、パンクバンドのCDをずいぶん買った。知っているバンドも、名前しか知らないバンドも、棚の前に立つと手に取ってみたくなった。棚と棚の間が狭く、人とすれ違うたびに体を斜めにした記憶がある。ジャケットを一枚ずつ確認していく時間だけは、いくらあっても足りなかった。

だから記憶の中では、この一枚もあの棚に並んでいる。確かなことではない。けれど、そう思うと不思議なくらい違和感がない。

そういえば、あの店は今もあるらしい。けれど、僕の記憶の中では、棚と棚の間が狭かった、あの頃の姿のまま残っている。

そう考えると、ずいぶん長い時間が経った。

「Teenage Kicks」という曲を、もうティーンエイジャーではない自分が聴いている。若返りたいわけではないし、下北沢でCDを買っていた頃へ戻りたいわけでもない。

それでも曲が始まれば、メロディは今も同じ速さでこちらへやってくる。年齢も、ジャンルも、どこで買ったのかも、その二分あまりの間だけはどうでもよくなる。窓の外がどんな景色でも、部屋の温度がどうであっても、そこだけは変わらない。

いまさら、分厚いカラオケの曲目リストをめくることもない。「Get Over You」は、誰かの前で歌わなくても、自分の中ではずっと鳴っている。

若い頃に好きだった音楽が、すべて今も同じように聴こえるわけではない。けれど、The Undertonesのメロディは、少しも遠くならなかった。

最後のトラックが鳴り終わると、部屋に静寂が戻った。

ディスクを傷つけないよう縁を持って、トレイに戻す。

ケースを閉じる。

背表紙が列に並ぶ。

また会う日まで、そこにいてくれ。

このCDをかけるたび、下北沢の棚と、あるはずのない曲名を探していた頃の自分が、少しだけ近くなる。

 

 

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