Artist:The Undertones
Album:The Undertones(1979)
Track:Teenage Kicks/Get Over You/Girls Don't Like It
The Undertonesを先に知ったのか、「Teenage Kicks」を先に聴いたのか、もう覚えていない。今となっては、どちらでもいいのだと思う。
とにかく、1970年代後半のパンクバンドの中で、THE BOYSとThe Undertonesは、僕の中では別格だった。パンクともパワーポップとも言われるが、そんな区別はもう野暮だと思っている。
いちばん好きなのは、代表曲ではなく「Get Over You」だった。
カラオケに入っていればいいのにと思ったことがある。もちろん、あるはずなどない。それでも当時、分厚い曲目リストのページをめくり、The Undertonesの名前を探した。友人が次の曲を入れている間、指だけがページをめくり続けていた。
見つからないことは、最初から分かっていた。それでも、もしかしたらと思った。
好きな曲というのは、ときどき人にそんな無駄なことをさせる。
だが、好きなのは「Get Over You」だけではない。
「Teenage Kicks」は、途中で手拍子が入り、曲は二分半にも満たない。勢いよく走り出し、こちらが何かを考えるより先に、もう終わってしまう。それでも、もう一度聴きたくなる余白だけを残していく。
「Girls Don't Like It」は、このアルバムの中で三本の指に入る曲だ。すぐ耳に残るメロディがあり、少し頼りなさのある歌声が、そのまま曲の魅力になっている。
結局、どれか一曲を選べと言われても、選べない。順位をつけようとするたびに、いつも違う曲が浮かんでくる。それだけ、このアルバムには隙がなかったということなのだろう。
荒さや速さもある。けれど、最後に残るのは、いつもメロディだった。
このアルバムをどこで買ったのかは、もうはっきり覚えていない。おそらく、当時住んでいた下北沢のdisk unionだったと思う。

あの店では、パンクバンドのCDをずいぶん買った。知っているバンドも、名前しか知らないバンドも、棚の前に立つと手に取ってみたくなった。棚と棚の間が狭く、人とすれ違うたびに体を斜めにした記憶がある。ジャケットを一枚ずつ確認していく時間だけは、いくらあっても足りなかった。
だから記憶の中では、この一枚もあの棚に並んでいる。確かなことではない。けれど、そう思うと不思議なくらい違和感がない。
そういえば、あの店は今もあるらしい。けれど、僕の記憶の中では、棚と棚の間が狭かった、あの頃の姿のまま残っている。
そう考えると、ずいぶん長い時間が経った。
「Teenage Kicks」という曲を、もうティーンエイジャーではない自分が聴いている。若返りたいわけではないし、下北沢でCDを買っていた頃へ戻りたいわけでもない。
それでも曲が始まれば、メロディは今も同じ速さでこちらへやってくる。年齢も、ジャンルも、どこで買ったのかも、その二分あまりの間だけはどうでもよくなる。窓の外がどんな景色でも、部屋の温度がどうであっても、そこだけは変わらない。
いまさら、分厚いカラオケの曲目リストをめくることもない。「Get Over You」は、誰かの前で歌わなくても、自分の中ではずっと鳴っている。
若い頃に好きだった音楽が、すべて今も同じように聴こえるわけではない。けれど、The Undertonesのメロディは、少しも遠くならなかった。
最後のトラックが鳴り終わると、部屋に静寂が戻った。
ディスクを傷つけないよう縁を持って、トレイに戻す。
ケースを閉じる。
背表紙が列に並ぶ。
また会う日まで、そこにいてくれ。
このCDをかけるたび、下北沢の棚と、あるはずのない曲名を探していた頃の自分が、少しだけ近くなる。
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