道は、まだ北へ続いている。

直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、写真や音楽のこと。思いつくまま、ここに書いています。
直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、
北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、
写真や音楽のこと。
思いつくまま、ここに書いています。

道の駅の向こう側 #12|太古の螺旋と、雨の湖

今日の行き先

訪問日:2026年7月19日(日)
場所:三笠市
天候:雨
移動手段:BMW 320d
カメラ:Sony α7 V / FE 24-70mm F2.8 GM II

今日も雨だった。

今年の北海道の週末は、どうも天気に恵まれない。土日だけを狙って降っているのではないかと思う。

家を出て、高速道路の料金所を抜ける。雨音と走行音が少しずつ大きくなり、オーディオのボリュームを一つ上げた。

道の駅三笠に着いたのは、午前九時頃だった。

北海道道の駅第1号、道の駅三笠の外観

雨なのに、駐車場には思ったより多くの車が停まっている。まずは、スタンプを押してしまおう。

スタンプブックの55ページ目を開き、力強く押した。

外へ出て、建物の周りを歩いてみる。駐車場の奥に、大きな水車が見えた。

近づいていくと、水車の前に犬を連れた初老の男性がいた。

目が合うと、男性は犬を連れ、静かにその場を離れた。大きなカメラをぶら下げている私を見て、場所を空けてくれたのかもしれない。

少し申し訳なく、ありがたかった。

あらためて、水車を見上げる。

動いてはいない。そもそも、今も動くものなのかは分からない。

雨のせいか、水路の水は濁っていた。古びた木の骨組みだけが、静かにそこへ残っている。

道の駅三笠にある大きな木造の水車

そういえば、嫁から頼まれていたことがある。

道の駅へ行くなら、山わさびがあったら買ってきてほしい、と。

売店をのぞいてみたが、まだ開店前だった。帰りに、もう一度立ち寄ることにする。

次の目的地は、三笠市立博物館である。

道の駅から、およそ15キロ。雨に濡れた、まっすぐな道を走った。

博物館に着くと、駐車場には二、三台の車が停まっているだけだった。一番遠く離れた場所にBMWを停め、車を降りる。

三笠市立博物館の入口

病気をしてから、人や車が密集している場所を少し避けるようになった気がする。理由は自分でもよく分からないが、空いている場所を見ると、そちらへ向かうようになった。

入場料を払い、館内に入る。

展示室へ進むと、目の前に多くのアンモナイトの化石が広がっていた。博物館らしく規則正しく並べられているが、その数の多さが、かえって異様に見える。

三笠市立博物館、多数のアンモナイト化石が並ぶ展示室

太古の生物の痕跡が、石になって現代まで残っている。

理屈では分かっている。それでも、同じ空間に並んでいる光景を見ると、どこか不思議だった。

展示室の一角には、巨大なアンモナイトの実物大模型が置かれていた。

近づいてみる。

さすがに、道の駅で見た水車よりは、だいぶ小さい。それでも、生き物として考えれば十分に大きい。

説明によれば、殻の直径は約2.5メートルあるという。

三笠市立博物館の世界最大のアンモナイト実物大模型、殻の直径約2.5m

巨大なカタツムリというか、ヤドカリというか。あれが海の中にいたと考えると、ほとんどゲームに出てくるモンスターである。

奥には、恐竜の骨格が見えた。

まぁ、あるよね、そりゃ。

三笠市立博物館に展示された恐竜の骨格

そう思いながら、近づいた。

見上げるほど大きな骨格を前にして、私が最初に考えたのは、これを組み上げるのは大変だっただろうな、ということだった。

本当は、学問的な感動をする場面なのだと思う。だが、歳を取ると、現実的で理屈っぽくなってしまう。

一番奥の別室では、サンゴが特集されていた。

深海に生息するサンゴなど、パネルの説明をゆっくり読みながら進む。説明によると、サンゴは植物ではなく、動物らしい。

その表面を、まじまじと見てみる。

模様は幾何学的だった。何かの法則に従っているようにも見えるし、ただ複雑に折り重なっているだけのようにも見える。

ファインダーをのぞいた。

展示室全体を見ていたときより、近づいて細部を見たときの方が、ずっと不思議だった。

サンゴ化石の表面、幾何学的な模様のクローズアップ

博物館を出て時計を見ると、午前十時十五分になろうとしていた。

まだ時間がある。

ここから数キロ先に、桂沢湖がある。

昔、バイクで何度も通ったことがある。だが、いつも通り過ぎるだけで、降りたことはなかった。

せっかくだから、行ってみることにした。

しばらく走ると、木々の向こうに湖面が見えた。ナビの画面には、桂沢ダムと表示されている。

湖畔へ続く坂道を下る。

坂の途中では、本州ナンバーのバイクに乗ったライダーが一人、休んでいた。小雨の中で、この先も走るのだろうか。

そう思いながら、駐車場にBMWを停めた。

湖の水は、深い緑に見えた。周囲の森林と、重い雲の色を映しているのかもしれない。

雨の桂沢ダム、深い緑色の湖面と周囲の森

カメラを構え、シャッターを切る。

水面をぼんやり見ていたせいか、カメラの設定を変えることが、頭から完全に抜けていた。

気づいたのは、車へ戻り、カメラをバッグへしまうときだった。

まぁ、なんとかなるだろう。

そう思いながら、頼まれたお使いを済ませるため、もう一度、道の駅へ向かった。

今日の一枚

サンゴ化石の表面を写した一枚。

巨大なアンモナイトや恐竜の骨格よりも、ファインダーの中に現れた小さな模様の方が、なぜか強く残った。

道の駅の向こう側

山わさびを買い、助手席に置いた。

エンジンをかける。ワイパーが、雨を払う。

水車は動かず、アンモナイトは石になり、桂沢湖の水面だけが雨に揺れていた。

何度も通り過ぎてきた道を、今日は少し違う速度で走った気がする。

通り過ぎるだけだった場所にも、降りてみれば、何かが残る。

道は、まだ北へ続いている。

 

 

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