今日の行き先
訪問日:2026年8月1日(土)
場所:北竜町ひまわりの里/道の駅 サンフラワー北竜
天候:曇り(現地到着後、一時晴れ)
移動手段:BMW
カメラ:Sony α7 V/FE 24-70mm F2.8 GM II
札幌は、朝から小雨だった。
窓の外を見ながら、今日はやめておくかと少し考えた。
天気予報の降水確率は30%。北へ走っているうちに止むかもしれない。少なくとも、一日中降り続く予報ではなかった。
それなら行ってみようと思い、カメラをバッグに入れた。
目的地は北竜町。道の駅サンフラワー北竜と、ちょうど見頃を迎えているひまわりの里だった。
久しぶりの、片道100kmを超えるドライブになる。
ここ数日あった、ぼんやりとした感覚も、ようやく落ち着いてきていた。
身体の状態を確かめながら走るには、少し長い距離かもしれない。
それでも、北へ向かってみたかった。
高速道路に入り、一定の速度で進む。
フロントガラスには、ときどき細かな雨粒が当たった。ワイパーを一度だけ動かすと、その後はしばらく必要がなくなる。その繰り返しだった。
空は明るくならない。
ただ、北へ進むにつれて、雲の切れ間が少しずつ見えるようになった。
約1時間12分で、最初の目的地、道の駅サンフラワー北竜に着いた。

正面に立つと、想像していたより大きな建物だった。
城というのか、洋館というのか。中央には細長い塔があり、その両側に赤い屋根の建物が伸びている。
どこの国の様式なのだろう。
少し考えてみたが、すぐには答えが出なかった。
北海道の道の駅には、ときどき説明の難しい建物がある。土地の風景とは少し違う場所から運ばれてきたような外観なのに、長くそこに立っているうちに、いつの間にか町の顔になっている。
入口の近くには温泉が併設されていた。
大きな荷物を持たず、慣れた様子で建物へ入っていく人が何人かいる。観光の途中というより、温泉そのものを目的に来ているように見えた。
中へ入り、道の駅スタンプを押す。
滞在は短かった。
今日の目的は、この建物の先にある。
車へ戻り、5分ほど離れたひまわりの里へ向かった。
見頃を迎えた週末だけあって、駐車場には観光バスが並んでいた。入口付近には警備員が立ち、次々と入ってくる車を空いている場所へ誘導している。
車を停めて外へ出る。
そのとき、雲の隙間から青空が見えた。
札幌を出たときには、ここまで天候が回復するとは思っていなかった。
少しだけ、ほっとした。
歩き始めると、木製の大きな看板が見えてきた。

「ひまわりの里」
その文字の向こうを、赤と黄色に塗られた遊覧車がゆっくり通り過ぎていく。
車両には何人かの観光客が乗っていた。歩かずに、広い園内を一周できるらしい。
看板だけを撮るつもりだったが、ちょうど遊覧車が重なった。
慌ててシャッターを切った。
狙って待った写真ではない。
けれど、こういう偶然の方が、その場所の動きをよく残してくれることがある。
さらに先へ進む。

色鮮やかなゲートの向こうに、一本の通路が伸びていた。
その両側には、ひまわりが並んでいる。
まだ入口に立っただけなのに、黄色い花の密度が、それまで見てきた畑とは違っていた。
奥には有料のひまわり迷路がある。
せっかくここまで来たのだから、入らずに帰る理由はない。
入場料を払い、中へ進んだ。

ひまわりは、自分の背丈を超えていた。
見上げると、花はどれも同じ方向を向いていた。
通路の両側から、大きな葉がこちらへ張り出している。花だけを見ていると明るいが、足元には太い茎と濃い緑が重なり、畑の中は思っていたより深い。
少し前まで見えていた青空は、もう消えていた。
空には厚い雲が戻り、花畑の上を低く覆っている。
晴れているうちに、もっと構図を考えずに撮っておけばよかった。
どこから撮るか。焦点距離はどうするか。人が通り過ぎるのを待つか。そんなことをゆっくり考えているうちに、空は変わってしまった。
チンタラしていた、と言えば、その通りだった。
だが、写真を撮るというのは、たぶんこういうことなのだ。
光は待ってくれない。
雲も、花も、人も、こちらの準備が整うまで同じ場所にはいてくれない。
それでも、曇り空の下では、黄色がかえって静かに見えた。
青空を背景にしたひまわりは、夏そのものになる。
灰色の空を背負ったひまわりは、もう少し黙って立っているように見えた。
畑の中を歩いていると、黄色い車が現れた。

1968年式、スバル360。
丸いヘッドライトと、小さな車体。ボディは、ひまわりに合わせたような黄色だった。
展示用に置かれているのだろうが、周囲の花に埋もれかけた姿には、妙な実在感があった。
いまにもエンジンをかけて、細い通路を走り出しそうに見える。
新しい車では、こうはならないのかもしれない。
少し傷み、塗装にも時間が残っている。その古さが、花畑の中でかえって生きていた。
今日見たものの中で、いちばん目が離せなかった。
その先でも、何度か立ち止まって撮った。

すれ違う人のほとんどは、スマートフォンで写真を撮っていた。
首からカメラを下げている人は、思ったほど見かけない。
観光地にはもっとカメラを趣味にしている人がいると思っていたが、勝手な思い込みだったらしい。
スマートフォンで十分なのだろう。
実際、ここまで花が多ければ、何で撮ってもひまわりの里には見える。
それでも、自分はカメラを持ってきた。
ファインダーの中で、どの花を残し、どの花を外すかを考える。その時間も含めて、ここへ来たかったのだと思う。
一通り撮り終え、出口へ戻った。
入口付近では、ツアーコンダクターらしい人が、小さな団体を前に集合時間を大声で説明していた。
周囲を見渡すと、マスクをしている人はほとんどいない。
いろいろな事情があって、人の多い場所ではマスクを着けていた。
ただ、せっかくひまわりの中まで来たのに、この場所の空気を一度も直接吸わずに帰るのも、少し惜しい気がした。
人の少ない場所まで歩き、マスクを外した。
大きく息を吸う。
強い花の香りがしたわけではない。
湿った土と草の匂い。その中に、夏の畑の匂いが混じっていた。
それで十分だった。

通路は、花の間を曲がりながら、その先へ続いていた。
どこへ出るのかは、立っている場所からは見えない。
それでも道があるなら、進めばいい。
ひまわりは、晴れるのを待ってはいなかった。
青空が出ても、厚い雲が戻っても、同じ場所で咲いていた。
出口へ向かう前に、道の駅の売店に寄った。
北竜町特産だという、ひまわり油が並んでいた。
嫁への土産に、一本買うことにした。
「また、頼んでもいない余計な物を買ってきて」
言われることは、買う前から分かっていた。
分かっていて、レジへ向かった。
今日の一枚
1968年式、スバル360。
ひまわりの色に合わせたような黄色いボディ。花畑の中に置かれた小さな車は、展示物というより、そこへ自分で走ってきたように見えた。
今日いちばん、目が離せなかった一台だった。
道の駅の向こう側
ひまわりは、同じ方向を向いていた。
到着したときに見えていた青空は、気づけば厚い雲に隠れていた。
思い通りにならないことは、天気だけではない。
だが、花の中に置かれた古い車は、傷んだボディのまま、いまにも走り出しそうに見えた。
頼まれてもいない土産を買ってしまう性分も、たぶん変わっていない。
200万本の黄色の中で、今日いちばん覚えていたいのは、その二つだった。
駐車場へ戻り、エンジンをかける。
バックミラーの中で、ひまわりの里が少しずつ小さくなっていく。
今日の景色を、ひとつ持ち帰る。
道は、まだ北へ続いている。
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