Artist:Magazine
Album:Rays & Hail 1978–1981(1987)
Track:Shot by Both Sides
「Shot by Both Sides」を最初に聴いたのは、ラジオだった。
ラフィンノーズがゲストだった気もするし、THE MODSだった気もする。もう30年以上前のことだから、はっきりとは覚えていない。
番組名も、誰が曲を選んだのかも分からない。ただ、ラジオからあの曲が流れてきたことだけは覚えている。
パンクというより、ニューウェイブに近い音だったのだと思う。けれど、その頃の僕に、そんな区別がきちんとできていたわけではない。
ただ、なんともいえないアンダーグラウンドな響きに衝撃を受けた。
暗く、乾いていて、少し危ない。それまで聴いていたパンクとは違う場所から鳴っているように聞こえた。
分かりやすい音ではなかった。それなのに、耳が離れなかった。
ギターも、ベースの動きもいい。特に、一瞬静まりかけてから、また盛り上がっていくところで、いつも気持ちを持っていかれる。
自分にとって、大事な一曲のひとつであることは間違いない。
その後、中古の輸入盤で『RAYS & HAIL 1978–1981』を買った。

Magazineの初期の曲を集めた編集盤だった。ライナーノーツはなく、バンドについて詳しく書かれたものも入っていなかった。
けれど、それで困ることはなかった。「Shot by Both Sides」が聴ければ、それでよかった。
このCDには、もちろんほかにも曲が入っている。
何度か通して聴いたはずだ。それでも、不思議なくらいほかの曲の印象が残っていない。
嫌いだったわけではない。飛ばして聴いていたつもりもない。ただ、「Shot by Both Sides」の存在があまりにも大きかった。
一枚のCDを持っているのに、一曲しか覚えていない。そんな作品は、ほかにはあまりない。
アルバムを聴いたというより、あの一曲を何度も通過してきたような気がする。
イントロが鳴ると、ラジオの前にいた頃の感覚が戻ってくる。何を目当てに番組を聴いていたのかは曖昧なのに、その音だけは今も残っている。
歳を重ねてから、音楽について書かれた本を少し買うようになった。
新しく書かれた解説書ではなく、1980年代初期に出た本だった。当時の音楽が、まだ現在形で書かれている。
ある日、ページをめくっていると、Magazineと「Shot by Both Sides」について書かれていた。その文章を読んで、僕は初めてMagazineというバンドのことを少し詳しく知った。
どこから始まり、どんな時代の中にいて、なぜあのような音を鳴らしていたのか。知れば、なるほどと思うことはあった。あの曲が、それまで聴いていたパンクと少し違って聞こえた理由も、分かったような気がした。
けれど、本を閉じたあとで思った。それを知る必要は、本当にあったのだろうか。
知識があることで、音楽がつながって見えることはある。知らなかったバンドや曲へ進むきっかけにもなる。それでも、何も知らなかった頃の僕にも、「Shot by Both Sides」は十分すぎるほど強かった。
誰が作ったのか。
どんな時代に生まれたのか。
何と何の間に位置する曲なのか。
そんなことを知らず、ラジオから流れてきた音だけを覚えていた。それでよかったのではないかと思う。
詳しく説明できなくてもいい。Magazineというバンドのことを、すべて理解する必要もない。
一曲だけ覚えている。それだけで、このCDを棚に置いておく理由には十分だった。
本で読んだMagazineの知識は、いつか少しずつ忘れていくだろう。けれど、ラジオから流れてきたときの衝撃だけは、忘れない。
バンドのことは、あとから知った。曲のことは、ずっと前から知っていた。
最後のトラックが鳴り終わると、部屋に静寂が戻った。
ディスクを傷つけないよう縁を持って、トレイに戻す。ケースを閉じる。背文字が列に並ぶ。
また会う日まで、そこにいてくれ。
このCDをかけるたび、忘れてしまったラジオ番組の向こうから、あの一曲だけが戻ってくる。
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