道は、まだ北へ続いている。

直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、写真や音楽のこと。思いつくまま、ここに書いています。
直腸がんで、ストーマのある体になった。
仕事に戻り、バイクにまたがって、
北海道を走っています。
治療のこと、暮らしのこと、
写真や音楽のこと。
思いつくまま、ここに書いています。

CAPOX療法2クール目|洞爺湖まで行ける二時間

8時15分、病院に着いた。

今回はCAPOX療法の2クール目。1クール目は入院してオキサリプラチンを投与したが、今回からは初めての外来治療になる。

車では来なかった。地下鉄とバスを乗り継いできた。前回、投与後にぼんやりした感じや集中力の低下があり、運転していて少し危ないと思ったことがあったからだ。運転を禁止されているわけではない。それでも今日は、公共交通機関を選んだ。

採血と、点滴の針

まずマイナンバーカードを端末に通す。続いて別の端末に診察券を通し、採血室へ向かった。

採血室の前にある端末でバーコードを読み込ませると、いつもとは違って、

「係員が来ます」

と表示された。

何かあったのかと思ったが、そういう話ではなかった。今日は採血だけでなく、そのまま点滴に使う針も入れるためだった。

採血とルート確保が終わって時計を見ると、8時45分ごろ。病院に着いてから30分ほどだった。

点滴ルートを確保した腕

その後、外科外来へ向かう。血液検査の結果が出るまでは診察に呼ばれない。いつもの経験では、ここから1時間くらい待つ。

今日はその待ち時間の間に、以前から予定されていた術後の検査も入った。その内容については、別の記事にまとめることにする。

検査が終わったのは9時13分。

思ったより早い。

「全然大丈夫です」

9時30分になろうとした頃、待合室の電光掲示板に自分の番号が表示された。診察では、血液検査の結果を見ながら主治医と話した。

白血球は3,700/µL。血小板も基準値を少し下回っていたが、主治医からは許容範囲で、予定どおり投与できると言われた。

体調について聞かれた。

「大丈夫ですか?」

「全然大丈夫です」

そう答えると、

「凄いですね!」

と言われた。

実際、1クール目の副作用はあった。冷たいものに触れたときの違和感、疲労、少しぼんやりする感じ。それでも数日でかなり戻った。だから「全然大丈夫」は嘘ではない。

ただ、検査票に並ぶ数字を見ると、やはり抗がん剤治療を舐めてはいけないとも思う。

元気でいられることと、薬が身体に何もしていないことは、どうやら別らしい。

主治医からは、2クール目以降、副作用が初回より重くなる可能性もあると言われた。

そりゃそうか。まだ2回目なのだ。

初めての化学療法センター

9時43分、化学療法センターに着いた。初めて入ったが、中の雰囲気は腫瘍内科の外来に近い。

待合室にはかなり人がいた。この人たちも、それぞれ何かの治療を受けに来ているのだろうか。そう思うと、少し胸が詰まる。

中では、あちこちから点滴ポンプのアラーム音が聞こえていた。ひとつ止まると、別の場所からまた鳴る。看護師さんたちは忙しそうに動いている。会社でいえば、鳴り続ける外線電話みたいなものなのかもしれない。

10時24分、吐き気止めの点滴が終わった。グラニセトロン1mg/50mLと、ホスアプレピタント150mg。。前回と同じ組み合わせだった。初回は吐き気が強く出なかったので、自分としては、この前投薬がかなり効いていたように感じている。

そして、いよいよオキサリプラチン。前回は入院中だったため、薬が病棟に届くまでかなり待った。今回は違った。薬はすぐに来た。

同じ病院、同じ薬でも、入院と外来では調製や搬送の流れが違うのかもしれない。理由は分からない。ただ、待ち時間は明らかに短かった。

洞爺湖まで行ける二時間

10時32分、オキサリプラチン245mgの点滴が始まった。薬量は前回と同じ。投与も前回と同じく、輸液ポンプではなく自然滴下だった。

CAPOX療法2クール目で投与したオキサリプラチンの点滴バッグ

看護師さんから、

「ピリピリしてくると思います」

と言われた。そう言われると、逆に気になってしまう。

腕を触る。指を動かす。何もない。30分経っても、まだピリピリしない。前回はもう少し早く、なんとなく違和感が出た記憶がある。おかしいな。

そんなことを考えながら時計を見る。オキサリプラチンの投与時間は約2時間。自分には、時間を車の移動距離に置き換えて考える癖がある。

2時間あればどこまで行けるだろう。札幌からなら、洞爺湖あたりまで行ける。そう考えると、2時間は結構長い。今日はその2時間を、北海道を走る代わりに、化学療法センターの椅子で過ごしている。

やっと出たか

投与開始から1時間ほど経った頃、腕と指先にピリピリした感じが出始めた。

「やっと出たか」

なぜか、そんなことを思った。待っていたわけではない。看護師さんに言われてから、ずっと身体の変化を探していたのだと思う。

持ってきた麦茶のペットボトルを持ってみた。まだしびれるほどではない。ただ、冷たさを妙に強く感じる。

喉はどうだろう。一口飲む。特に変化はない。続けてもう一口飲むと、わずかにしびれるような感覚が出た。

「ああ、やっぱりね」

そんなことをしながら時間を潰していた。人体実験みたいなものだ。もちろん、確認できたので、それ以上はやめた。

温めてみる

1時間半ほど経つと、腕と指先のしびれはかなり強くなってきた。治療スケジュールの説明を見ると、血管痛がある場合はホットパックを使えると書かれている。試してみることにした。

決して記事のネタのためではない。

電子レンジで温めるゲル状のパック。アイスノンの逆バージョンのようなものを、点滴している腕に巻いてもらった。

点滴中の腕にホットパックを巻いた様子

劇的に変わったわけではない。それでも、なんとなく楽な気はした。次回も使うなら、しびれが強くなってからではなく、もう少し早めにお願いしてもいいかもしれない。

投与中、ときどきお腹にも手を当てた。ストーマの温度や膨らみを、いつもの状態と比べて確認する。今のところ問題はなさそうだった。

12時22分、オキサリプラチン終了

12時22分。オキサリプラチンが終わった。最後に生理食塩水を流す。これが意外と痛かった。投与速度を600から400に落としてもらう。最後の最後で、普通の食塩水に痛がるとは思わなかった。

12時35分、すべての点滴が終了した。10時32分から約2時間。

本当に、洞爺湖まで行けるくらいの時間だった。

帰り道

12時38分に会計へファイルを出した。その後、院外薬局へ。薬を受け取って外に出たのは13時05分だった。朝8時15分に病院へ入ってから、約4時間50分。

外来の抗がん剤治療と聞くと、点滴の2時間だけを想像してしまう。実際には、採血があり、結果を待ち、診察があり、治療があり、薬局がある。ほぼ半日だった。

帰りの途中、ストーマから水っぽい排泄が出始めた。こういうとき、オストメイト対応トイレがあると本当に助かる。今日は車ではなく、公共交通機関で来てよかったと思った。

地下鉄に乗り、吊り広告を眺める。

転職。

資格取得。

キャリアアップ。

先のことを考えさせる言葉が並んでいた。

自分も先のことを考えている。ただ今日は、少し種類が違う。

2クール目は終わった。まだ元気だ。でも、身体の中では確実に何かが起きている。そのことだけは、白血球の数字と、指先に残るピリピリが教えてくれていた。


※この記事は、筆者個人がCAPOX療法2クール目(オキサリプラチン投与・外来)を受けた際の記録です。薬剤の種類・投与量・手順、副作用の出方や強さには個人差があります。治療に関する判断は、必ず主治医や医療スタッフにご相談ください。

 

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